混在する感情と記憶の揺らぎを反映する意図で2021年に誕生した香りは、現代の不確実な時代感覚を切り取る一品として設計された。トップではヨーロッパ産ブラックカラントの深みある果実感と南米由来マテの温かな緑味が立ち上がり、スリランカ(セイロン)ティーの落ち着きが続く中核と対比を成す。ミドルでは合成のヴァイオレットリーフが予測不能なニュアンスを加え、心象風景に揺れ動く不安や期待を暗示する。ラストには北欧森林を想起させるバーチウッドと、古代地中海・ナイル地域を思わせるパピルスが静かに根を張るような温もりを残し、全体を支える強さと余韻を与える。名称「Mixed Emotions」が示唆する通り、心地良さと不穏さ、慰めと戸惑いが同居する構造は、断片的な記憶や共感的な情動を香りに転写するアプローチを体現している。香調にあたっては断片的な感情の対比性を意識し、素材の出自やイメージを抽象的に組み合わせることで、着用者自身の内的対話を誘引する設計がなされた。中立的かつ詩的に香りそのものを描写し、現代の複雑さを象徴するメッセージを携えたユニセックスフレグランスである。